「雪上のチェス」ともいわれるカーリング。戦略やチームワークが勝敗を分ける氷上の熱い頭脳戦は、見るほどに知るほどに惹き込まれていく。クレブスポーツがサポートする日本を代表する名門チーム「SC軽井沢クラブ」が、いよいよ大勝負に挑む。

40m先の氷上に描かれた円を標的にストーンを滑らせてく。ミリ単位のコントロール精度やわずかな判断が勝負の明暗を分け、極めて高度な技術と戦略性が求められる、カーリング。
この競技が今から8年前、日本で一躍脚光を浴びたとき、氷上で熱く戦っていたのが山口剛史選手だ。日本の名門SC軽井沢クラブの司令塔であり、長く日本のカーリングを牽引してきたトップカーラー。

「2018年の平昌は日本男子チームにとって2度目の出場を果たせたオリンピックでした。世界選手権の結果でわずか10ヵ国しか出られない狭き門。結果は8位でしたが、僕はあまりにも楽しくてZONEに入っちゃって記憶がほとんどないんですよ(笑)。やっぱりオリンピックは違う。カーリングをもっとメジャーなスポーツにするというミッションのためにも、ミラノを目指してトレーニングに励んでいます。

今回、SC軽井沢は男子・女子・ミックスダブルスの3カテゴリーでチャンスがあります。男子は、まずは9月の国内代表決定戦で優勝することが必須、その次は12月のオリンピック最終予選で、残り2つの出場枠をかけての熾烈な戦いになります」

SC軽井沢男子チームは2024年・25年と日本選手権を2連覇、2025年の世界男子カーリング選手権に日本代表として出場。その実力からすれば可能性への期待は膨らむ。4人のメンバーは年齢幅も経歴もバラエティ豊かな個性派ぞろいだ。
「僕らの強みは特にゲーム後半の粘り強さ。氷は場所によって、日によって全然違う。さらに時間による変化を読むのが難しいんです。氷の状態によってストーンの曲がり方や滑り方が刻一刻と変化する。スウィープ(こすり)によってもストーンを2~4m動かすことができます。

それらを全部読みながら、いかに作戦通りにゲームを運ぶか。後半になって氷の状態がよく見えてくれば戦術的にも攻めやすい。でも1試合が2~3時間と長丁場なので、すごく集中力や忍耐力が必要だし、氷の上って寒いですから(笑)。
最初に投げる「リード」は同じようなショットを淡々と繰り返せること。「セカンド・サード」は、いろんなショットがくるし、スウィープがあるのでフィジカルも精神的にもタフなオールラウンダー。


最後の「スキップ」は司令塔として戦略的・冷静でプレッシャーにも強くなくては、といわれてます。その上で、最も大切なのはコミュニケーション。4人の力がそろったときが一番強い。勝つための筋道はおおよそ僕が考えるのですが、最後の10エンドの勝負の1投までに個々の力をどう引き出すか、それが肝です」

ストーンが滑るその数秒に緊張と歓声、静と動が交錯する様は、観る者を惹きつける。山口選手はカーリングの魅力をこう語る。
「40m先の的に向かって投げるストーンが思い通りに〝ぴたっ″と決まる快感が楽しい。そして相手との駆け引き。投げる精度だけでなく作戦で勝負が変わる面白さは特別です。カーリングは観るスポーツでもあります。作戦の内容まではわからなくても、それすらも予想しながら自分がチームの指揮をとる監督になった気分で観ると、最後に答え合わせがすごく楽しいです。

4人の持ち味が作戦にどう発揮されているのか、ぜひゲームを観てほしいです。僕ら試合中はマイクをつけていますから、実際のコミュニケーションも聴いてもらうと、さらに面白いと思います!」
9月の国内代表決定戦は、NHK BSもしくは日本カーリング協会のYou tube LIVEで観戦が可能だ。ぜひSC軽井沢クラブを応援しよう!
[Profile]
山口剛史 Tsuyoshi YAMAGUCHI

北海道南富良野町出身。力強いスウィープを武器とし、サードやスキップをこなす。世界選手権6度出場、日本選手権では7度の優勝を誇り、2018平昌五輪では8位入賞。SC軽井沢ではクラブ運営やジュニアの育成にも取り組む、かなめとしてなくてはならない存在。
協力:SC軽井沢クラブ ※ Xraeb book「AndSnow Vol.4」より抜粋